自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

自閉症と診断されて

 我が子が自閉症と診断されたのは3歳のときだった。保育園に入園の際、専門の先生に診てもらって下さいと言われた。そういえば、2歳になっても3歳になっても「パパ」「ママ」と言ったことはない。親の姿が見えなくても泣くようなこともなかった。言われてみれば普通の子とはどこか違う。そのため、児童相談所へ連絡を取り、面接を受けることになった。

 ところが、面接を受ける前に妻が「この子は自閉症かもしれない。」と言って、1冊の本を出してきた。妻は看護師であり、自閉症の特徴を説明したページを私に見せてくれた。クレーン現象や目を合わせないことなど、いくつかの共通点があった。そして医師からの面接の後、「自閉の傾向があります。」と言われた。私は、やっぱりそうかと思ったが、特にショックはなかった。事前に妻に言われていたこともあるが、私が思ったのは、「この子は何か目的を持って生まれてきたのではないか。そして、その目的のために我々は親として選ばれたのではないか。」ということである。

 この自閉症という障害を持った子どもを授かったことにより、私たちは今まで知らなかった世界を見ることになる。

*クレーン現象:言葉の代わりに親の腕をもって何かをさせようとする意志の行動。