自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

お給料日のたのしみ

 私の息子が働く生活介護事業所にも給料日がある。毎月25日がその日だ。お給料の額は4000円~5000円位である。彼らは労働をしてその対価としてお給料の頂いており、社会の一員として繋がっているのである。
 
 彼らの仕事の内容は地域新聞の配布とリモコンの掃除である。地域新聞というのは、千葉県を中心に無料で各家庭に配布されているフリーペーパーで、一部茨城県守谷市取手市、埼玉県の三郷市越谷市春日部市でも配布されている。(集合住宅には配布されない)

 地域新聞の発行日は毎週金曜日であり、翌週には彼らが取手の地区を一軒一軒個別に訪問し、ポストへ投函しているのである。また、それだけではない。配布するまえに、チラシの折り込みを手分けしてやっているのである。それも含めての作業である。

 つぎに、テレビやエアコンのリモコンを綺麗にする仕事である。テレビやエアコンは10数年使うと壊れるものであるが、リモコンは壊れない。そんなリモコンを業者の方が回収し、綺麗に掃除して中古品として販売するのである。そして、その掃除をするのが息子たちの仕事である。

 彼らは専用の洗浄液とタワシや綿棒、爪楊枝を使って巧みに掃除をする。テレビやエアコンのリモコンというものは10年以上も使っていると細かいところにも汚れがたまり、それはそれは汚いものである。ところが彼らが掃除をするとたちまち新品同様に綺麗になるのである。洗浄をすませ、綺麗になったリモコンを箱に詰めて、業者の方へ納品する息子の姿はとても嬉しそうに見える。

 そして、その両方の仕事の対価としていただいているお給料であるが、我が家ではそのお給料を持って帰ってくる日は、一つの儀式がある。みんなの前でそのお給料袋を開き、拍手をしながら息子に「お疲れさまでした」と労いの言葉をかけるのである。そして「Kちゃん凄い」とみんなで褒めて挙げるのである。2歳とし上の姉は専門学校へ行っていた頃、「私より先に社会へ出て稼いでいる。凄い。」と言い、昨年病院を退職し、しばらく無職だった妻は「私より稼いでいる」と褒めていた。もちろん受け取りのサインは、息子自身に書かせて、自分の力でお金を稼ぐ大切さと喜びを実感してもらっている。

 このような体験と喜びを頂いている生活介護事業所のスタッフの方々、また配布をさせて頂いている地域新聞社とリモコンの掃除をさせて頂いている関係者の方々に感謝もうしあげます。