自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

じゃんけん

日本人ならだれでも知っているじゃんけん。じゃんけんは片手で石、ハサミ、紙の形を作り、それを誰かと出し合って勝負をするあそびである。人はいつの頃からかこのじゃんけんをあそびのなかで覚えて自由に使うようになる。じゃんけんをするには相手が必要で…

名前のファイル

私の息子は中学卒業後、特別支援学校高等部へ進学した。入学式が終わって初日の連絡帳に担任の先生からメッセージがあった。 「息子さんは靴に興味があるんですね。下駄箱をずっとみていました」 私は連絡帳に返事をかいた。 「興味があるのは靴ではなく名前…

地図がだいすき

息子が好きな物の一つに、地図がある。保育園児の頃、家にあったロードマップを見るようになった。はじめはロードマップにあるガソリンスタンドやコンビニのマークに興味を示し、そのロゴマークを正確に白い紙に写して楽しんでいた。 小学生になり、社会科の…

国旗がだいすき

私の息子は保育園児のとき、国旗に興味を示した。保育園の運動会で運動場に張り巡らされたさまざまな国旗を見て、心惹かれたのだろう。 ある日、家で国旗を紙に描きはじめた。そして、描いた数枚の国旗をセロハンテープでひもに付けて、椅子の背もたれに固定…

記憶力

一般にいわれていることではあるが、知的障害を持っている人は、ときに特殊能力を持っている場合があるようだ。アメリカのある青年は、ヘリコプターで東京の上空を一度飛んだだけで、目で見た風景を記憶し、地上に戻りその風景を正確に絵に描くことができる…

F君との出会い

ある日、仕事帰りに息子を保育園へ迎えに行ったときのことだ。保育園の入り口の門から教室へ向かっていたそのとき、砂場で遊んでいた一人の男の子が、私に砂をぶつけてきた。ふいの出来事に私はおどろき「こら~!」と怒鳴った。この男の子はわざとやったの…

お風呂はひとりで

息子とは、小さなときからずっと一緒にお風呂に入っていた。これは、どの家庭でもそうだと思う。普通、中学生になると思春期を迎え、親離れをしはじめ、一人でお風呂に入るようになる。私もそうだった。 しかし息子はそうではなかった。一人で入るのが怖かっ…

ひとりごと

私の息子はよく、ひとりごとを云う。普通ひとりごとは、何かを考えながらボソボソと云うものである。しかし、この子の場合は、かなりはっきりとした声で発する。そのため、とつぜん何かを話始めると、それを聞いた周りの人は驚いてしまう。自分の気持ちは、…

保育園のアンケート

自閉症の息子が通っていた保育園でアンケート調査を実施したことがあった。父母会が中心となり、保護者から保育園への要望を調べるためだ。給食の野菜は有機野菜を使ってほしいとか、保育園の入り口の門から建物まで屋根を付けて欲しいなどいろいろあった。 …