自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

国旗がだいすき

 私の息子は保育園児のとき、国旗に興味を示した。保育園の運動会で運動場に張り巡らされたさまざまな国旗を見て、心惹かれたのだろう。

 ある日、家で国旗を紙に描きはじめた。そして、描いた数枚の国旗をセロハンテープでひもに付けて、椅子の背もたれに固定した。この子は運動会を思い出しているんだと気づき、部屋の壁から壁へとロープを渡し、それらの国旗を付けてあげた。国旗をしたから見上げて息子は満足そうだった。

 小学生になると息子は放課後、子どもルームで過ごすようになった。偶然にも、そこには世界中の国旗を紹介している本が蔵書の中にあり、それを見ているうちにすべての国旗を覚えてしまった。とくに驚いたのは南太平洋の小さな島々やアフリカの国々の国旗などもすべて国名と共に覚えていたのだ。自由に会話もできずに、言葉も発することができないのに、国旗を見せて、どこの国ですかと尋ねると、はっきりとした声で答えるのである。それも親が聞いたこともない国名で、そんな国あるのと、聞き返すほどの国で、生涯絶対に行くことはないであろうと思わせる国々であった。

 学校であった発表会では、黒板の前に立ち、指示棒をにぎり、一枚一枚の国旗を指して、国名を声に出して説明していった。家では見ることがないような、息子の姿であった。こんなことが、出来るようになったんだな~と感心するのであった。