自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

ゴミ箱持って来て

 私が住んでいる地域では、月曜日と木曜日が燃えるゴミの収集日である。とある月曜日の朝、私はいつものようにピンクのゴミ袋に1階にある部屋のゴミを入れていた。

 そこに息子が2階から降りてきた。私は息子に、「ママの部屋からゴミ箱を持って来て」と、頼んだ。するとすぐに2階へ上がって行き、ゴミ箱を持って来てくれた。それも妻の部屋のゴミ箱だけでなく、娘の部屋のゴミ箱も気を利かせて持って来たのだ。

 私は凄いと思った。私でさえも娘の部屋のことは気にしていなかった。頼んだのは妻の部屋のゴミ箱のことであり、いっしょに娘の部屋のゴミ箱を確認し、持って来てくれるなんて想像もしていなかった。息子の成長を肌で感じたときであった。

 自閉症という障害は、発達障害の一つであり、言葉の障害や知能の遅れが特徴である。そして、他の人の気持ちを理解できないという特徴もあるが、このときは私の言っている言葉の意味を広く理解してくれたのだった。