自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

私の部屋入ったでしょう?

 ある日、娘が突然大きな声で怒り出した。「Kちゃん!私の部屋入ったでしょう?」
娘が留守にしている間、弟のKが勝手に姉の部屋に入ったことを怒っているのだ。2階にある娘の部屋は鍵がかからないドアなので、入ろうと思えば自由に入れる。しかし、女性としては、弟であろうと親であろうと留守の間に勝手に入られては迷惑だと思うのは当たり前のことである。

 しかし、私はどうして留守の間に、弟のKが入ったことが分かったのか疑問に思い尋ねてみた。すると娘は「本箱の本がきれいに整頓されている。」と答えた。つまり、乱雑に本箱に押し込められている漫画本がきれいに整理されて収まっているのである。これには納得した。たしかに、それはKの仕業であることは明白である。

 自閉症児はこのような習性のようなものがある。乱雑になっているものをきれいに整理整頓するのである。映画「サム」の中で、自閉症の主人公が砂糖の小袋をきれいにシュガーポットへ納めているシーンがあった。それを見て、あるあると納得したものだ。

 先日も、私の部屋にある本箱の周りに置いてあったはずの私の本が、急に姿を消した。
私は、お気に入りの本をすぐに読めるように手の届くところに置きっぱなしにする癖がある。あれ~と思い、本箱のフタを開くと案の定、きれいに並んでいた。そんな知恵がある息子の姿が嬉しく思われる出来事だった。