自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

大晦日の乾杯

 去年の大晦日の晩。私たちはいつものように「紅白歌合戦」を家族で楽しんでいた。そして、終了後いつものように「ゆく年くる年」をぼんやり観ていた。テレビの画面には各地からの映像が流れていた。あと、5分もすれば新しい年が始まるというときだった。

 息子が冷蔵庫からジンジャーエールの大きなペットボトルを取り出した。また食器棚からグラスを取り出し、みんなに配ったのだ。「え~?どうした?」と思っていたら、ジンジャーエールを注ぎだした。「あ~乾杯をしたいのか」と納得した。そして、新年のカウントダウンと共にみんなで乾杯し、新しい年を祝ったのである。

 そして、ふと気づいた。確かに一昨年の大晦日の晩、私がジュースを用意してみんなで乾杯したのだった。私がそれを完全に忘れていたが、息子は覚えていたのだった。新しい年を家族で祝うとき、とても幸せな気持ちになる。息子も同じ気持ちなのだろう。

 今年もあっと言う間に8月になってしまった。大晦日まであと4カ月。家族みんなで乾杯をすることを忘れないようにしよう。