自閉症の息子と共に

自閉症の子どもを育てた父のエッセイ

地図がだいすき

 息子が好きな物の一つに、地図がある。保育園児の頃、家にあったロードマップを見るようになった。はじめはロードマップにあるガソリンスタンドやコンビニのマークに興味を示し、そのロゴマークを正確に白い紙に写して楽しんでいた。

 小学生になり、社会科の授業で習ったのだろうか、都道府県名と県庁所在地をすべて覚えてしまった。たとえば、大分県岐阜県など、大抵の場合そのシルエットだけを見せられても私には分からない。しかし、息子はそれでも正確に答えられるのである。

 ある日、その才能を親学級*で披露することになった。次々と県名と県庁所在地を答えてゆく息子を見て、生徒たちは「凄い!」と声を挙げたそうである。

 息子は数字を読めるが、その概念が分からない。「5」という数字は読めるが、「スプーン5本持って来て」と言っても理解できない。しかし、地図などの映像で見えるものは、その形や位置を理解して覚えているようだ。

 発達障害というものは、すべての分野において遅れているのではなく、ときには驚くような発見があるものだと思う。焦らず子どもの成長を見守ろう。


*親学級: 知的障害や学習障害などを持った生徒は、特別支援学級で学習するが、給食や体育などの時間に交流を持つため、同時に健常者のクラスにも所属している。